ここにいること。
大人になるまで
第一章
「はぴねす」
「幸せ」と名付けられたこの施設は、育児放棄された子供たちを預かる児童養護施設だ。
子を産んで間もなく放棄された子ども、
幼児虐待で保護された子ども、
両親が事故で死に、身寄りがなかったため保護された子ども、
施設の前にまるで「犬」のように段ボールの中にすてられていた子ども・・・。
たくさん傷を負いながらも、懸命に生きている。
高校二年生になる彼らもまた、その「子ども」なのだった。
遠くで、小さい子どもたちの歌う歌が聞こえる。
これは・・・かえるのうた?
かわいい、無邪気で悪を知らない声。
自分たちがどんなひどい目にあわされたか忘れたかのように。
きっと、何年かたって大人になるにつれ真実を知り深く傷を負う。
「自分は捨てられた子」であると。