『短編』しあわせの条件
があぁ~~~ん。
やっちゃった?
わたし、ひょっとして、やっちゃった?
というか、ここ誰の部屋?
あんた、誰!?
一気に目が覚めたわたしは、自分のいるところをきょろきょろと見渡し、そして、おそるおそる目の前の男性の顔をのぞき見しようとした時だった。
背中を向けていたその男性が、寝返りを打った。
わたしに向けられた無防備な寝顔のその人は、隣りの席の後輩、平木くんだった。
「ええ――っ!!??」
なんで!?
なんで平木くんとこういうことになっちゃうわけ?
わたしが素っ頓狂な声を出してしまったので、平木くんは、「う~ん…」と唸りながらゆっくりまぶたを開けた。
わたしは思わず布団で自分の体を隠し、シングルベッドの端すれすれまでずり下がって、平木くんを凝視した。
平木くんは、わたしをちらりと見て、何事もなかったかのように、
「あ、おはようございますぅ」
と言って、会社にいる時よりもさらにぼさぼさの髪をわしゃわしゃとかき混ぜた。