『短編』しあわせの条件
「僕なら、寂しい思い、させませんよ」
そう言って、平木くんは真剣なまなざしでわたしを見つめた。
その視線に思わず胸が熱くなったので、わたしはとっさに目をそらし、
「な、なに言ってるのよ」
とごまかした。
なのに、平木くんは、
「先輩は僕といた方が幸せになれる」
と言って、わたしの顔をじっと見つめた。
「なによそれ。なんにも知らないくせに勝手なこと言わないでよ」
「じゃあなんで、寂しいなんて言うんですか。フィアンセがいるのに、玉の輿に乗るのに、どうして寂しいって言って、泣くんですか!」
会社ではどこか抜けているようなイメージがあっただけに、少し声を荒げた平木くんに驚いたと同時に、酔った勢いでそんなことまでしゃべってしまっていた自分が恥ずかしくてたまらなかった。