『短編』しあわせの条件
「放っといてよっ!」
平木くんの手を振り解こうとしたが、彼は手を離してくれなかった。
「放っておけない!」
「離して!」
「離さない!」
「なんでよ!」
「好きだからですよ!」
その言葉に目を見開いてしまった。
「……僕は、先輩のこと、好きなんです」
平木くんはわたしをまっすぐ見つめた。
そんな。
いきなりそんなこと言われても……。
目がきょろきょろと泳いでしまう。
「……だから、婚約者がいるんだってば」
ぼそっと呟くと、
「……だけど、好きなんです」
平木くんは少しかすれた声で呟いた。