『短編』しあわせの条件
「ありがとうございました」
店員さんが、小さな紙袋をわたしに手渡した。
「ありがとう、トオルさん」
「ううん。それより、ごめんね。本当は僕が選んでプレゼントした方がドラマチックだったのかもしれないけど……でも、未知ちゃんが気に入ったのをプレゼントしたかったから」
「ううん。ありがとう。本当に嬉しい」
「ああ、よかった」
トオルさんは、ほっとした様子で小さく息を吐いた。
ダイヤの指輪、そう、婚約指輪の入った紙袋を持ちながら、トオルさんの隣りを歩く。
トオルさんの手首には、高価な腕時計。
何気なく着ているシャツだって、ブランドもの。
そう。
トオルさんはリゾートホテルを経営している会社の御曹司。
つまり。
わたしは玉の輿に乗るのだ。