『短編』しあわせの条件


「……その人の、どんなところが好きなんですか?」



平木くんがぽつりと言った。



どんなところ。



トオルさんのどんなところが、わたしは好きなの?



わたしは、彼の……



「条件でしょ」



平木くんが淡々と言った。



「先輩、あの日の晩、自分で言ってましたよ。結婚と恋愛は違うって。だから恋だの愛だのより、まずは条件なんだって」



そんなことまでしゃべってたの?わたし。



「玉の輿に乗れるのに、どうしてわたし、こんなに寂しいんだろうって」



それを聞いて、わたしは言葉が出なくなってしまった。



静かに唇を噛みしめる。



「確かに、結婚と恋愛は違うかもしれません。だけど、条件は変わりますよ?もしその彼の会社が倒産した時、先輩はその人と添いとげられますか?その事実を受け止めて、その事実を、その彼を、許せますか?」


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