『短編』しあわせの条件
1か月後。
わたしは、平木くんと一緒に居酒屋にいた。
「ああ、うまいなぁ」
彼は幸せそうに、隣りで肉野菜炒めを頬張っている。
この前までデートで夕食と言えば、フレンチやイタリアンのディナーだったわたしにとって、居酒屋デートはちょっぴり新鮮だった。
お金を選ばなかったわたしの選択は、正しかったのかどうか、正直わからない。
だけど、わけのわからない寂しさからは解放されたのだから、多分、きっと、これでよかった、のかな。
「あ。この肉野菜炒め、オイスターソースが入ってるな」
平木くんは、くんくんと肉野菜炒めの匂いを嗅いでいる。
「そういえば、平木くんって鼻が利くよね。この前もわたしがメロンパン食べてたの、匂いで言い当てたもんね」
「ああ。あれは違いますよ」