『短編』しあわせの条件
「だめだめ。それがしょっちゅうだと、物が目的だと思われちゃうじゃない」
「あながち間違ってないんじゃないの?」
美緒の鋭い指摘に、思わず絶句してしまう。
「だけどさ。貧乏とお金持ちなら、誰だってお金持ちと結婚したいじゃない。トオルさん優しいし、結婚相手としては申し分ないもん」
「結婚相手としてはね」
美緒の含みを持った言い方に、
「恋はいつか冷めるのよ。結婚は生活。生活にはお金。お金が全てとは言わないけど、お金があれば解決できることっていっぱいあるのよ。あって困ることはないの」
と、いつもの持論を展開したので、
「左様でございますね」
と美緒は引き下がった。