『短編』しあわせの条件
「なっ!」
わたしが言葉をつまらせていると、
「メロンパンの甘い匂いがしました」
と言って、少し得意げな顔をしてまた机に突っ伏した。
ちょ、ちょっと。
何なのよ。
それだけ言って、なんでまた寝るのよ。
というか、あんたは犬か。
どれだけ鼻が利くのよ。
……はぁ。
わからないわ、この後輩くん。
わたしが眉をひそめて首を傾げていると、課長が慌しくフロアにやって来た。
「高野!この前の会議で決まったキッズブランドのファッションショーの企画書、できてるか?」
「え?まだですけど……」
いきなり何なんですか。
〆切来週だって言ったじゃない。
なんでいきなり「できてるか?」なわけ?