『短編』しあわせの条件




結局、キッズファッションショーの企画書は、予定通り来週提出することで問題なかった。



専務が軽い気持ちで「企画書ができていたら見せてほしいな」と言ったのを、課長はおそらく専務にいい顔をしたくて、昼休みに血相を変えてわたしに詰め寄ったのだろう。



結局、「企画書はただいま作成中です」と課長が専務に報告したら、「あ、そう」で済んだ、ということを秘書課の友だちが教えてくれた。



とんだとばっちりだ。



「もう、やってらんない」



行きつけのバーで、テキーラサンライズを口に含んでは、マスターに愚痴をぶつける。



「今日はけっこうあおってるねぇ。大丈夫?」



「だぁいじょうぶ。こんな日はぱ~っとお酒飲んで、嫌なこと忘れるのが一番健康的なのよ」



そう。



ぱ~っと忘れる。



だって、私はもうすぐリゾートホテル経営社長の御曹司と結婚するんだもん。



あくせく働かなくたってよくなるんだから。



寿退社するまでの我慢よ。



そう。



わたしは玉の輿に―――……















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