コトバナ屋~お求めの言葉は何ですか?~

と、その時。

視界に黒っぽい何かが掠めた。

何ともなしに顔を上げると、

そこにいたのは・・・・

「猫?」

一匹の黒猫が、

じっとこちらを見つめていた。


墨を流したようなスッとした体躯に、

緑の目が印象的だ。

首に赤いリボンを付けているので、

野良猫ではないらしい。


黒猫は暫くこちらを見ていたが、

やがてフイッと視線を逸らして、

トコトコと歩き始めた。

「・・・・帰るか」

あの猫も家に帰ることだし。

軽い気持ちで猫の歩いていった方を見て、

思わずドキリとした。

とっくにどこかに行ったと思っていた猫は、

少し行ったところで立ち止まり、

じっとこちらを見つめていたんだ。


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