コトバナ屋~お求めの言葉は何ですか?~
黒猫は魔女に寄り添う。

「あ~良かった。
 
 これで少しは口が上手くなればいいねぇ」

近くのビルの屋上――

その柵の上に座っていたコトハは、

満足そうに頷きながら私の頭を撫でていた。

ニャア、ニャニャ、ミャー
―難しいと思うけどねぇ。

 でもコトハも意地悪なことするわね。

「意地悪?何が?」

キョトンとした表情のコトハを見上げ、

私は彼女の膝から肩に飛び乗った。

ミャ~、ニャアニャァ
―これよ。彼が出した時、

 咄嗟に隠したでしょ。

 これも花束に加えれば良かったのに。

オーバーオールの胸ポケットを叩きながら、

私はコトハの目を覗き込む。

その視線を受けたコトハは、

ポケットからそっと花を取り出した。

< 38 / 48 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop