コトバナ屋~お求めの言葉は何ですか?~
黒猫は魔女に寄り添う。
「あ~良かった。
これで少しは口が上手くなればいいねぇ」
近くのビルの屋上――
その柵の上に座っていたコトハは、
満足そうに頷きながら私の頭を撫でていた。
ニャア、ニャニャ、ミャー
―難しいと思うけどねぇ。
でもコトハも意地悪なことするわね。
「意地悪?何が?」
キョトンとした表情のコトハを見上げ、
私は彼女の膝から肩に飛び乗った。
ミャ~、ニャアニャァ
―これよ。彼が出した時、
咄嗟に隠したでしょ。
これも花束に加えれば良かったのに。
オーバーオールの胸ポケットを叩きながら、
私はコトハの目を覗き込む。
その視線を受けたコトハは、
ポケットからそっと花を取り出した。