コトバナ屋~お求めの言葉は何ですか?~
黒猫は少し進むと立ち止まり、
じっと俺のことを見つめてくる。
まるで、ついてこいと言っているようだ。
俺は駅から猫へと向きを変えて、
一歩を踏み出した。
すると黒猫は、
ついてくる気があると分かったらしく、
もう振り向かないでトトトッと歩き始める。
どんどん進んでいく猫を追いかけながら、
いつの間にか曲がりくねった道を
歩いていることに気付いた。
帰りのことが気がかりだけど、
まあ住宅街だし、何とかなるかと
楽天的に考えて、
道を曲がった黒猫の後を追う。
少し先を行く黒猫は、
緩やかだけど、
かなり長い上り坂を歩いていた。
地味に体力を消耗していた俺が
登るのを躊躇っていると、
すでに坂の中腹当たりにいる黒猫が
こちらを振り返った。
早く来いと言ってるようで、
ため息を一つ付いてから登り始める。