コトバナ屋~お求めの言葉は何ですか?~
下を向いて黙々と歩き、
ようやく坂を登り切った時は
さすがに息が荒くなっていた。
息を整えてから顔を上げると――
小さな建物が建っていた。
黒猫はドアの前に座っていたが、
こちらと目が合うと一声ニャアと鳴いて、
小さな猫用ドアをくぐって
中に入ってしまった。
店に近づくと、
ドアの隣に立て掛けられた
小さな黒板の文字が目に入った。
“コトバナ屋
お求めの花やコトバをお渡しします”
「コトバ、って、言葉のことか?」
言葉を渡すって何だ。
花を渡すってことは、
ここは花屋なのか?
首を傾げながらも、
僅かに芽生えた好奇心のまま、
目の前のドアを開けた。
「・・・・何だ、ここ」