コトバナ屋~お求めの言葉は何ですか?~
「フィラム?」
「そう、スパティフィラムから
取った名前。格好いいでしょ」
そのスパ何たらとはなんだ?
だが猫の名前は分かっても、
人間の名前が分からないと
会話をする時に不便だ。
「君は?」
「名前?コトハだよ」
「コトハ」
確認するように繰り返すと、
その子――コトハは、
クスクスと笑いながらこちらを見つめ、
くりんと首を傾げた。
「お兄さん、さっき女の人と
ケンカしたんだってね。
ダメだよ、気持ちはちゃんと伝えなきゃ、
不安にさせちゃうよ?」
「なっ!」
何で知ってるんだ!
そう言いたかったけど、
驚きが先に立って言葉に出来ない。
そんな俺の様子を見て、
コトハはフィラムと呼んだ黒猫を膝に上げ、
誇らしげに言う。
「フィラムは色んな所に行くからね。
お兄さんのケンカの場面を
ばっちり目撃したんだって」
・・・・は?