コトバナ屋~お求めの言葉は何ですか?~

「・・・・それだと、

 猫が話したように聞こえるが」

「うん」

いっそ清々しいほどあっさりと頷き、

ごそごそとポケットをあさり始めた。

「これを持ってるからね」

そう言いながら、

掌にのせられたものをこちらに見せる。

「花?」

小さな掌にのせられていたのは、

押し花にされた、

スミレによく似た赤紫の花だった。

「ストレプトカーパス、

 イワタバコ科の多年草で

 南アフリカが原産。

 英名はcape primrose」

偉く流暢な発音だ。

こちらに投げられた花を受け取ると、

コトハはとっておきの秘密を教えるように

声を潜めた。

「花言葉はね、“囁きに耳を傾けて”だよ」

「囁き?」

それが何だと思って顔を上げると。


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