キャンバス。
RED~情熱の色~
「…お前ってさ、ほんと趣味悪いのな」
失礼極まりない。
あたしにそんなことをいうのはこの男、如月 瞬。
同じ高校に通い、同じ学年であり、同じ授業のサボリ魔である。
サボリ魔であるあたしたちは、住処を学校の保健室か屋上とする。
場所は限られてるため、ヤツとも出くわすことが多く、会わない日の方が少ない。
会えば会ったで「またお前か」などと言われ、あたしがへそを曲げてると「また拗ねてんのか」と馬鹿にされる。
ヤツの容姿は黙っていれば文句なしのくせに、得意の毒舌は影を潜めることなくあたしの心に突き刺さる。
そしてそれは今日も健在だった。
「…お前ってさ、ほんと趣味悪いのな」
「あんたに関係ないでしょーがっ。だいたい何を根拠に言ってんだ」
「あのキモデブと付き合ってることとか。」
「…キモデブ言うな、アホ」
ヤツが言うことも分からんでもないが、言い方に問題がある。
あたしの彼氏である伊藤 健太は大して容姿が優れているわけでもなく、何か得意なものがあるわけでもなく、よく「なぜ付き合っているのか」など聞かれる。
理由など分からない。
でも別れると言ったら面倒なことになるのは目に見えていた。
「お前さー、黙ってりゃそこそこかわいいのにな。…もったいねー」
「…あんたこそ、黙ってりゃそこそこイケメンなのに毒舌があるからだめなのよ」
「それでもモテんだからいーんだよ」
自分で言うな、自分で。
…まあ事実だってことはよく分かっている。
ヤツが告白されただの、付き合っただの、クラスの女子が騒いでるのをよく耳にするし、聞けば相当なタラシじゃないか、コイツは。