偽恋
「...座れよ」

「...うん」


屋上に着くと、優斗が日陰で風通しのよい地面にすわり



隣を指差した。



静かな屋上には


春風の音と、都会の香りがした。




「...なぁ美姫」


「ん?」


隣に座る優斗の横顔を見上げたけど


風になびくサラサラな髪の毛


横からでも分かる長いまつげ


高い鼻


ほんのりアヒル口の唇に


綺麗なうなじ


そんな優斗の姿にドキっとしてしまい


あわててあたしは視線を前に移した。



「お前なんか不安あんだろ?」

「えっ...!」


けど、あたしに図星のことを言ったから

つい優斗にまた体を向けてしまった。


「...フっ。分かりやすいんだよ」


そして優斗はそういいながら


あたしの顔を一瞬見て笑った。


っ////


いまの...笑顔はやばいかも。


カッコイイ....。



照れたあたしは、俯いた。


すると優斗は...


さっとあたしの頬に触れ、あたしを見つめた。


「無理にとは言わねぇけど、お前の不安な顔みたくない」


そしてまさかのそんな甘い台詞を面と向かって言ってきたから!!


あたしの心臓はこわれちゃったんだよ?


「っおい!美姫」


そんな優斗の声と、綺麗な顔を最後に


しだいに声は遠くなり....視界もぼやけて..



はい。



なんとあたし、優斗の前で2度目の気絶をしてしまいました。










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