If -転生-


ふっ、と 短く息を吐いて柿崎さんが顔をあげると、そこには普段浮かべているような柔らかい笑みは消えていた


「単刀直入に訊くわ、あなたには前世の記憶はある?」

「え……?」


どうして彼女が前世のことを?

私と話したのはほぼ初めてのはずなのに



……ひょっとして、前世で会っている?



「あります」


気付いたときにはそう答えていた

それを言うことで自分が窮地に立たされた経験などいくらでもあるはずなのに

そっと彼女の様子をうかがってみると、表情を変えず、ただ黙ってアイスティーを飲んだ



「『ミシェル・ルバート』の名前を覚えているかしら」


「!!!!」



ミシェル・ルバート………ミシェルという名前には聞き覚えがあった
いや、聞き覚えがあるどころではない


ミシェルは、私の義理の姉だった









あれは今から何年前だっただろうか、私が持っているなかで一番古い記憶だ


当時の私は『ミカエル・ルバート』としてヨーロッパに生まれ、生まれたときからルバート家の養子として育てられた
(ヨーロッパと言ったのは、当時は国と言うよりは地方としての区分しかなかったからだ)


私たちは小さな村の小さな家に家族四人、父と母と姉と私で、貧しいながら楽しく暮らしていた


ただひとつ、その小さな村に住む人々には特別な力があった


村人たちはみな、『魔法』が使えたのだ



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