I



「・・・・・思い出したい?俺を・・・・・」


悠は私に背を向けて、リボンを奪ったまま歩き始めた。


「まって・・・・」


その背中を追う。


「志津の中の俺を、思い出したい?」


ちらりと悠は振り返った。


白い肌が、月に照らされる。



「・・・・・・私は、忘れているの?貴方を・・・」

「そうだよ」

「・・・・何で?」

「それは、俺も聞きたいよ」


悠は困ったように微笑んだ。



「悠を、思い出したい・・・・・・・」



私は、溢すように漏らしていた。


その瞬間に、悠は今まで見せた事がないくらい、妖しく笑った。





< 12 / 54 >

この作品をシェア

pagetop