I
「俺はね、志津に俺の事を思い出してほしいし、思い出してほしくもない。
今、複雑なんだ」
困ったように、悠は笑う。
「・・・きっと、俺の事を思い出したら、志津は悲しむから」
どくり、と心臓が高鳴る。
「え?」
「ううん、何でもない。早く、思い出せたらいいね」
悠は立ち上がる。
私は呆然とその姿を見ていた。
“悲しむ”・・・・・・・・?
心に、何か変なものが残った。
「精神病院に行ってみようかしら・・・・・・」
「もう、行ったよ。志津は、病院で目が覚めたんだ。そしたら、俺の事を忘れてた」
「え!?」
「あれ、言ってなかった?」
悠は驚いた表情で私を見ていた。