I



どく、どく、心臓がうるさい。


そうだ、今まで何で不思議じゃなかったんだろう。


私には、“親”と呼べる存在の人物が、居ない。



「・・・・・くんも志津ちゃんと同じ年くらいに、ここを出たわねぇ」

「えっ、あ、はい、そうですね」


しまった。

ぼーっとしすぎた。



「今頃どうしてるのかしらねぇ」


おばさんは目を細めて、窓の外を見ていた。



「でも、自分達が育てた子が大きくなってるって事は、志津ちゃんが思ってる以上に嬉しいことなのよ!あぁ本当に良かった、幸せそうで」



笑顔を貼り付ける。


どう言う事だ。


私は、“悠”と言う存在も、“親”と言う存在も忘れているのか。


一体、何で・・・・・・?



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