I


『・・・何度・・・・!!何度言ったら分かるんだ・・・・!!俺がまた、向こうの夫婦に飛ばされるだけだろう!!!』



殺される、

その時は本気で思った。


私が荷造りしているのを見て、親は私の首に食いかかった。

嫌な音を立てて、親が口にしていた、溶けかけのアイスクリームは床に落ちる。



丁度世間はゴールデンウィーク。


悲鳴なんて聞いてる奴は居ない、父は私の首を絞めながらそう言った。




途端に、舞った、あか。


視界に、赤だけしか見えなくなった。



『ゆ、う・・・・・・・・』


どさりと父が倒れこむ。


赤黒く、嫌に反射している包丁を持っている悠が、重たく息を吐いた。


物音に騒ぎ出した母も、倒れた。



『志津を、もう傷つけない・・・・・』



純粋な、狂気。


血で染まった悠の顔が、映る。







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