I
悠は、卑怯だ。
結局、私から全部を奪っておいて、自分だけ、逃げてしまったんだ。
私は、次の日、目が覚めたのだ。
代わりに、隣には動かなくなった悠が居た。
ご丁寧に、紙に殴り書きの字で、
“愛してる”
だけを残して。
悠は、眠っているみたいに、動かなかった。
馬鹿みたいなことだけど、私は救急車を呼んだのだ。
そして、死因。
悠は薬物の大量摂取、私は少量の薬物摂取。
悠は、私が眠った後に、更に大量の薬を飲んだんだ。
私が飲んだ量は安全だという事を確認して。
そう、悠が望んだとおり、私の頭にはもう、“悠”しか考えられなくなった。
それが、悠の望みだったんだ。
私もその後すぐに悠と一緒に死のうと思ったけど、できなかった。
だって、生死の境で“愛してる”なんて紙に書いて、悠は私を生かせたかったんだ。
本当、ふざけた話。
私には、もう、悠との記憶しかない。