I


ふぅ、と溜め息をついた。


本当、人付き合いって面倒だ。

わざわざ笑顔を貼り付けて、人がいいように受け流さないといけない。


私は一人のほうが楽だ。


地面を睨む。


風がふわりと吹いて、真っ黒な制服のスカートが靡いた。



顔を上げる。


黄昏時の空が綺麗だ。

目を細めた。



「お嬢さん」


不意に、後ろから声がした。


男性の声だ。



「・・・・・は、い・・・・・・・?」


振り向くと、息を呑むくらい、綺麗な人が立っていた。


その人は、私に笑いかけた。




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