I
「俺は、斉藤 悠。ゆう、って呼んで」
「私は志津、です。呼び方は何でもいいです」
悠、は少し目を開いた。
でも、またすぐに表情を戻して、私に笑いかける。
「志津、甘いものは好き?」
「はい、好きです」
「じゃあ、今からスイーツが美味しいところに食べに行こうか」
“はい”しか出てこない。
自分でも自嘲するくらい、軽率だと思う。
見ず知らずの、綺麗なだけの男性に、ふらりとついていくなんて。
私は自分を疑った。
この、悠って人は、人を酔わせる力があるのだろうか。
そう思うほど、この人は何かを持っていた。