白緑蝶"vacances【続2】
百枝の心の声を、私達は聞く。

「知ってるよ」

「知ってる

 好きな人だったから彼との間
 にヤマトが産まれたんでしょ
 う?」

結婚する前まで恋多き女性だっ
た百枝が妊娠したのは、後にも
先にもヤマト、一人だけだもの

「そう、家族が欲しくてやっと
 手に入れた幸せ

 その絶頂だったのに女として
 見てもらえないどころか話す
 事さえなくなって冷め切った
 関係を修復したくて、抱きつ
 いたらアバズレとか酷い言葉
 も言われて・・・

 結局、裏切られてることに
 気づいて浮気なら許すつもり
 でいたのに、捨てられたのは
 私とヤマトで・・・

 私ってこんな女じゃなかった
 はずだって、浮気して捨てる
 側は私の方だったのにって

 だから離婚後はまたそういう
 自分に戻ったの

 正直、チヤホヤされるのは
 快感でもあったし

 でも、結婚前の私とは明らか
 に考えが違う私が存在して
 虚しさが付き纏って遣りきれ
 なくて・・・

 男性に身を委ねる時も本当は
 ものすごく怖いの」

心の叫びが、涙になる・・・

「マスミなら、大丈夫

 モモを必ず
 受け止めてくれるよ」
 
真澄にも悔いている過去がある

自分が過去に犯した間違いを
間違いだったと理解した真澄は
もう、同じ事を繰り返さない。

左腕の傷口に手を当てて私は
言う。
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