東京空虚ラバーズ
そこら中に窓ガラスの破片や紙切れ、何かの部品、木材なんかが落ちていた。それがこの町の"普通"。
ビルだけが残ったこの町に人の気配はほとんどない。商業施設も駅もその場に捨てられたままになっている。
ひたひたと誰も居ない町を歩いた。相変わらずかかとを潰して履いている上履きがぱかぱかと音を立てた。
ふと声が聞こえた。もめているような大声の会話。
自然とそちらへ足が向く。
ビルとビルの間の細い路地で、男子学生が数人がたむろっている。その中心にいるのは見るからに気弱そうな痩せっぽちの男子学生。
「カツアゲか……」
ぼそりと呟いた声は彼らにも聞こえたらしく、一斉に僕のほうを振り返った。
「なんだ、お前」
「あ、こいつ"紙袋くん"じゃん」
「噂の正義のヒーローか。すげー時代錯誤」
最初から敵意丸出しの彼らは僕を見て馬鹿にしたように笑い声を上げた。中心にいる痩せた男子学生は期待の眼差しを僕に向けていた。
「なに、こいつ助けにきたわけ」
中心の男の子を小突いて僕に問う。
「いや、別に。お構いなく」
そんな彼らに僕は応えた。