東京空虚ラバーズ
「は? なんだよそれ」
意表を突かれたらしい男子学生たちは間の抜けた顔で僕を見る。中心の男の子は信じられないという表情で僕を見ていた。
「どうぞ、続けて」
両手を差し出して、どうぞ、というジェスチャーをすると、彼らはにやりと笑って行為を続けた。
***
「なんで助けてくんなかったんだよ」
カツアゲをした彼らが去った後、顔にひとつだけ受けた拳の痕をさすりながら男子学生は僕に訊ねた。その場に座り込んだ彼は恨めしそうに僕を見る。最初から最後までただ見ていただけの僕を。
「正義の味方じゃなかったのかよ」
無造作に投げ捨てられた財布を拾って、彼はまた僕を非難した。
「君、最初から抵抗する気なんてなかっただろ」
彼から少しの距離を置いてポケットに両手に突っ込む僕を訝しげに見る男子学生。
「諦めてただろ」
僕の言葉に、彼は黙り込んだ。
「それに僕は正義の味方だなんて名乗ったつもりはないし、正義の味方でもない」
不機嫌そうに僕を睨みつける彼に微笑んでみせる。紙袋に隠れてそれは見えないと分かってはいたが。
「"紙袋くん"だ」