東京空虚ラバーズ
荒れ果てた"普通"の道を、アキラと二人並んで歩く。
すると前方から、よれよれのスーツを着た初老の男性が歩いてきた。
特に気に留めるわけでもなく歩いていると、アキラが不意に僕の腕を掴んだ。
「よし、行くよ千景くん」
決意したようにそう言ってからずんずんと歩くアキラ。僕はほとんど引きずられるようにしてついていった。
アキラは初老の男性の前でぴたりと止まり、彼を見つめた。
「……何か用かね」
疲れた声で男性が訊ねる。
「はい。訊きたいことがあるんですけど、いいですか?」
アキラははっきりとした口調で問いかけた。
「なんだ」
男性が聞き返した後、すう、とアキラが息を吸う音が聞こえた。
「あなたの"正義"って何ですか?」