東京空虚ラバーズ
何人に問い続けたのかも分からない。陽は大分傾いて来ていた。もうそろそろ終わりにしよう、とアキラに提案すると、アキラは「あと一人だけ」と言ってどこかへ向かって歩き始めた。
着いたのは、書店。古びた古本屋だった。
「ボクの行きつけ」
短く説明を加えて、アキラは店内に入っていった。
埃っぽい店内の突き当たりに、本に埋もれて誰かが居た。立派な白髭を携えた老人だった。店主だろうと思う。
アキラはその老人に近付くと、親しい友人にするような雰囲気で挨拶をした。
「こんにちは」
アキラの挨拶に、店主は開いているのか分からない細い目を向けた。
「ああ、アキラちゃんか。いらっしゃい」
優しい声と笑顔がアキラに向けられる。直後、店主は僕に気付いて首をかしげた。
「はて。そちらの男の子は初めて見るな。アキラちゃんのお友達かい」
「うん、まあね。千景くんっていうの」
ぺこり、と軽くお辞儀をする。
何の迷いもなくアキラが僕のことを"友達"と称したことに、内心少しだけ驚きながら。