東京空虚ラバーズ
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「っ、てめっ……! 一体何のつもりだよ!」
赤い頬を手の甲で拭いながら、少年は声を荒げた。
「何のつもり? それは君が一番よく知ってるんじゃないの?」
間抜けな顔が描かれた紙袋を被った学生服姿の少年が冷静な声で返す。
「知らねえよそんなん! お前がいきなり殴りかかってきたんだろ!?」
「シラ切る気? そうはいかないよ。ほらここに、証拠品」
そう言って紙袋の少年は足元に捨てられていた煙草の吸殻を拾った。
「は……!? そんなん捨てただけでなんだっていうんだよっ」
「"だけ"じゃない」
反論を静かな声で制すと、紙袋の少年は両腕の袖をまくった。
「お前みたいのがこの町を創り上げたんだ。俺は自分の"正義"に従う」
「は、何言って……!」
がつ、人が人を傷つけるときに聞こえるその音が響いた。
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