東京空虚ラバーズ
「どういうこと?」
アキラは屋上へと続く扉の手前で僕を待ち構えていた。急かすような瞳を向けて僕の言葉を待つ。
「僕じゃない」
そう、僕じゃない。
「殴ったりするのはやむを得ない時だけだし、多くてもせいぜい二、三発だ」
じ、とアキラが僕の瞳を見つめる。真っ直ぐな視線を絡ませたまま、アキラが口を開くのを待った。
「……そうだと思った」
ふっとアキラが微笑む。
「君が誰かを骨折させるまで殴るなんて、有り得ないと思った。だから吃驚した」
無言で頷くと、アキラは一度俯いてから顔を上げた。その瞳を鋭く変えて。
「……でも、じゃあ」
アキラが僕を見る。
「君の偽物が居るってことだ」