東京空虚ラバーズ
「何か対策を考えなくちゃ」
学校からの帰り道、アキラは顎に手を添えていかにも考えている素振りを見せながらそう言った。
「どうして」
「何言ってるのさ千景くん、君だってこのまま紙袋くんの悪名が広まったら困るでしょ」
生ぬるい、と小さく零すアキラ。
「それに、きっと偽物の紙袋くんが掲げてるのは、」
ちらり、アキラが僕を一瞥してから呟く。
「"過剰な正義"だ」
鞄を持ち直して、アキラは言葉を続けた。
「このまま野放しにしておいたら人を殺しかねないと思うよ、ボクは」
なんたって相手は煙草の吸殻を捨てただけで骨を折るような人間だ。アキラの言うことはもっともだと思った。
「でも、対策って一体何をするの」
「うん、そこだよね」
顔をしかめて何かを考えるアキラ。
「直接会って話をつけるのが一番手っ取り早いとは思うけど、どこの誰だかもわかんないし」
アキラと一緒になって僕も頭を悩ませる。
どこの誰かも分からない相手に何かを伝えるのは、なかなか難しい。
「向こうに探してもらうしかない」
ぽつり、呟くと、アキラは丸い目を僕に向けた。
「こっちからは探せない。だったら、向こうに探してもらうしかないだろ」
にやりと笑えば、アキラもまた同じように笑った。