東京空虚ラバーズ
紙袋を被って、ただ町を練り歩いた。アキラは少し離れたところから僕を見張っているはずだ。
一緒に居るところを偽物に見られたら危ないからと、僕はアキラを家に帰そうとした。しかしアキラは偽物の顔が見たいと強情に言い張り、最終的に僕からは少し離れて行動するというところで落ち着いた。
偽物の紙袋くんが、一体何を目的に動いているのか分からなかった。本物である僕にどんな感情を抱いているのかも分からない。僕を仲間と思っているのか、それとも。
僕はただ、彼の過剰な正義をやめさせたかった。いくら悪いことをだからといって、煙草の吸殻を捨てたくらいで骨を折るのは度が過ぎている。その過剰さを無くしさえすれば、僕としては偽物の紙袋くんが居ようが構わなかった。アキラは構うだろうが。
人気の多い場所を歩いた。その方がニセ紙袋くんの目に付く可能性が高いと思ったからだ。指を指されたり声を掛けられたりしたが、すべて無視。僕の目的はニセ紙袋くんだけだった。
「ちょっとそこのオニーサン」
少し歩き疲れてきたところで、真横から声を掛けられた。見れば、狭い路地の隙間に一人の少年が立っている。
紙袋を被った、少年が。