東京空虚ラバーズ
「ついて来て」
短く言い残し、少年は踵を返して狭い路地の中へ進んでいく。僕は素直に後を追いかけた。やがて少年は小さな空き地に入り、足を止めた。
「わざわざそんな格好で町をふらついてたってことは、僕を探してたんでしょ」
ニセ紙袋くんがポケットに手を入れたまま振り返って話し出す。制服も同じ。背格好も僕に似ている。
「……君の目的は、一体なに」
率直に、一番の疑問を口にする。少年が紙袋の中で含み笑いをしたのが分かった。
「君と一緒だよ。紙袋くん。僕はね、君の行動に感動したんだ。こんな町でもなお悪を滅し正義を貫こうとする君の姿勢にね」
彼の顔は見えないが、余裕そうな笑みを漏らしているであろう声色だった。まるで英雄を讃えるように。
「煙草の吸殻を捨てた人の骨を折ったのは本当?」
「ああ」
けろりと肯定が返ってきた。どうやら悪いことをしたつもりはないらしい。
「言っておくけど」
僕は声を張り上げた。
「僕は正義の味方だなんて名乗ったつもりはないし、そんなものになるつもりもない」
くすり。またもや少年が笑う。