東京空虚ラバーズ
「アキラ……」
どこから出てきたのだろう、アキラが少年の腕を握ってその手を制していた。
どこまでも真っ直ぐな瞳が少年を射抜く。
「紙袋くんは臆病者じゃない。ただ自分の力の大きさを知ってるだけだ」
少年がゆっくりと僕から手を放した。アキラは少年を見つめることをやめない。
「誰だ」
少年が低く唸る。
「紙袋くんの友達」
なんとも簡素な答えを返してから、アキラはそのまま言葉を続けた。
「君の言う正義が人を骨折させることなら、そんな正義こっちから願い下げだよ」
アキラが挑むような目付きでそう言うと、少年は威嚇するような低い声を出した。
「……悪いのはアイツの方だぞ」
「一言注意すれば済むハナシでしょ」
アキラの言葉に、少年は突然声を荒げた。
「言葉だけで理解し合えるならとっくにそうしてる! だがそうしないのは、口で何を言ったところで悔い改めない愚かな人間が居るからだ。この町が出来たのは何故だ? 空が曇り続けているのは何故なんだ! このままじゃ俺たちはかつての都市の人間と同じ過ちを繰り返してしまう。そうならないために、そうしないために! 過剰だろうがなんだろうが無理矢理でも変えていくしかないんだよ、人間を」
紙袋を被っていても、少年の鋭い瞳が想像できた。