東京空虚ラバーズ
「……お前は」
少年が低く唸る。
「お前は紙袋くんじゃない。俺が、本物の紙袋くんになってやる」
ぶん、今度は右から拳が飛んできた。後ろに避けてかわす。
「もし誰かが、誰かの物を盗んだら?」
拳を避けながら僕は静かに質問した。
「問答無用だ。ぶん殴ってやる。もう二度とそんなことできないように」
左下段の蹴り。手で受けてかわす。
「もし誰かが誰かを殺したら?」
左上段の蹴り。腕で止める。
「そいつを殺す。当たり前だ」
右中段の蹴りが飛んできた瞬間に、それを止めてそのまま掴んだ。少年がバランスを崩しかける。
「放せ」
「誰かが悪行を働いたらそれと同等か、それ以上の制裁を加えなければならない?」
「そうだ。……放せ!」
ぱっと少年の足を放し、勢いのままにその左頬に渾身の拳を入れた。
小さなうめき声と共に少年が倒れる。