東京空虚ラバーズ
倒れた少年に近付き、迷いなくその紙袋を脱がせた。黒髪の、精悍な顔立ちをした少年だった。
奪った紙袋をびりびりに破り捨てると、少年は悔しそうに唇を噛んだ。
「どうして分からないの。そんなことしたら、それこそ過ちを繰り返すだけだって」
少年の鋭い視線が僕に向けられる。
「やられたらやり返す。殺されたら、殺す。そんなんじゃいつまで経っても前に進めない」
離れてことの成り行きを見守っていたアキラが近付いてきた。
「強くならなきゃ」
横からアキラの声が聞こえた。
「ボクらがこの町で求められているのは、強くなることだ。助けを求めて縋るんじゃなくて、一人一人が強くならなきゃ。紙袋くんがしてるのはきっと、その手助けなんだよ」
アキラが少年を見下ろして静かに話す。顔を俯かせた少年を一瞥してから、アキラは僕の腕を取った。
「行こう、紙袋くん」
「うん」
いつか一緒に強くなれることを願って、僕たちはその場を後にした。