東京空虚ラバーズ
「君はほんとに愛想が悪いよね、ボクに対してだけ」
悲しむ風でもなくアキラは言った。
彼女の一人称は何故か「ボク」だ。出会ったときからそうだった。名前が男っぽいからかな、と適当に理由をつけて、僕は勝手に納得している。
「そんなことないと思うけど」
素っ気なく呟いてから自分の言い方の投げやりさに気付いて、確かにそうかも、なんて少しだけ思う。
「アキラに愛想良くする必要がないと思うだけ」
思い直して言い換える。アキラはさして興味もなさそうに「ふーん」と相槌を打ってから話を変えた。
「そういえばさ、今朝のニュース見た?」
「僕の家、もう電波入らないから」
「ボクん家だって入んないよ。町の端っこに粗大ごみがいっぱい積まれてる場所あるでしょ、そこのテレビで見てきた」
「見れるんだ。奇跡だな」
だから遅刻してきたのか、なんて細かいことは言わない。