東京空虚ラバーズ
「電池式の小さなラジオテレビだよ。白黒だし映像は馬鹿みたいに荒いけどね」
「見れるだけいいだろ。それで、何のニュースだったの」
「ついにこの町、国からも見放されたらしいよ」
感情の読み取れない声で、アキラはそう言った。
「どういうこと」
「ここはもう日本じゃないってこと。国からの補助金は完全にナシ、生活保護金も打ち切りだってさ。この町のほとんどの人が路頭に迷うだろうね」
「……かつての大都市が、この有様か」
18年前、東京はとうとうその"都市"の名を大阪へ奪われた。
50年ほど前から都市部で急激に進んだ環境の劣化は留まるところを知らず、都市を完全に食い荒らした。緑は消えうせ砂漠化が進み、人々は新天地を求めて早々にこの地を捨てた。
人が大幅に消えた地で建物の荒廃は止まらず、あちこちに廃墟が出来上がった。少しずつ電車の本数は減り、ついにはバスまでもがなくなった。
町は捨てられた建造物とごみで溢れ返り、町の規模はどんどんと小さくなっていった。
今では小さな村よりも細々と、この町は存在している。その周りを崩れた建物で囲まれながら。