東京空虚ラバーズ
「ボクらこれから、どうなるんだろうね」
「それは、僕ら次第」
灰色の空に手をかざしてみた。
弱い陽光は僕の手に流れる血管を透かしてみせたりはしない。だが確かにこの手には血が流れている。赤い赤い、命の水が。
「浪漫だって夢だって全部飲み込んでやる。疑わない、いつかこの町にも陽の光は射す」
厚い雲に覆われた町。僕は太陽を見たことがない。それでも僕は疑いたくなかった。せっかくここに生まれたのだから。
「ほんと、変な人だよね、千景くん」
僕を見つめてアキラがそんなことを言う。楽しそうな感情を微かに声に滲ませて。
「アキラには負けるよ」
身体に力を入れて上半身を起こし、そのまま立ち上がった。
窓ガラスがほとんど割れたビルとビルの隙間からいくつもの煙が立ち昇っている。
この町は全国から集められたごみを処理することで何とか成り立っていた。ここに住む人の大半がごみ処理場で働いている。
東京は日本のごみ箱と化した、と諦めたように言った人も居た。
すれ違っただけの、全身に疲れを滲ませたごみ処理場の作業服を着た男性。彼はもうこの町を出て行っただろうか。