リクエストを基にした・【Kiss】シリーズ 『甘々』・8
自分で食べようとしたけれど、フォークを持っている手を、上から彼の手が掴んできた。

そして手が重なったままケーキは一口サイズに切られ、わたしの口元に運ばれる。

「ほら、あーんしろ」

「あーん」

今度はわたしが食べさせてもらう番。

素直に口を開き、ケーキを食べる。

「…ん~。結構味が濃いような気がする」

母の愛がたっぷりと感じられるのが、ちょっと複雑な気分にさせられる。

「でも嬉しいよ。恋人になって、はじめてのバレンタインだしな」

今までだって、毎年、バレンタインにはチョコをあげていたのに。

やっぱり関係が変わると、気持ちも変わるんだろうな。

わたし達はその後も、互いに食べさせたり・食べさせられたりを繰り返して、ケーキの三分の一ぐらいは食べた。

「う~ん…。もうしばらく、甘い物は食べたくない」

口の中が甘ったるくって、ブラックコーヒーを飲んでもなおらない。

「ホワイトデーはおせんべいかおかきを希望する」
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