不良の有岡について。

ぽかんとしていると、「あ、涙止まった」と言われた。

…こいつ!!

信用ならない。人が死ぬか死なないかという瀬戸際だっていうのに。

ざぷん、と小さな波が寄せてくる。

悲鳴を上げながら更に有岡にしがみつく。

反射か何か、有岡は私の頭を支えてくれた。

そこまでは、良かった。

再度顔を近づけて、角度を変えて何度も口付けをしてくる前までは。

一度離されて、解放されたと思った。でも考えが甘い。次は噛みつくように唇を食まれて、ざらりと歯の裏を舐められた時には、腕の力が抜けそうになった。



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