不良の有岡について。
周りの視線よりも自分の安全。そう思っていた天秤が傾きそうになる。
私は、有岡の彼女じゃないし、夫婦じゃないし、家族じゃない。
腕を離して溺れてしまおうか。見かねた誰かが、助けに来てくれないだろうか。
ぼんやりとそんなことを考える。
「え…、とですね哀河サン。」
「…なに?」
次は何を言ってくるのかと構えた。
「この体勢、胸当たんだけど。」
瞬間、大きい岩石が頭に直撃したような衝撃のある言葉を落とされる。
やっぱりすぐに手を離しておくべきだった。
私はそれを実行する直前、有岡は少し驚いた顔をした。