不良の有岡について。

周りの視線よりも自分の安全。そう思っていた天秤が傾きそうになる。

私は、有岡の彼女じゃないし、夫婦じゃないし、家族じゃない。

腕を離して溺れてしまおうか。見かねた誰かが、助けに来てくれないだろうか。

ぼんやりとそんなことを考える。


「え…、とですね哀河サン。」

「…なに?」


次は何を言ってくるのかと構えた。


「この体勢、胸当たんだけど。」


瞬間、大きい岩石が頭に直撃したような衝撃のある言葉を落とされる。

やっぱりすぐに手を離しておくべきだった。

私はそれを実行する直前、有岡は少し驚いた顔をした。



< 116 / 256 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop