不良の有岡について。
有岡の胸に手をあてて離れる。
故意に傷つけた。
でも、なんだか怖くて。
もしも幸せを手に入れてしまったら、全てに有岡を巻き込んでしまいそうで。
というのは、後からつけたような口実。
本当は、もしも有岡が私に飽きてどこかに行ってしまったら、と考えると怖くてならなかった。
有岡は幸せをくれた。それは充分過ぎるくらい。
だから、もう良い。
「今更、引き下がられても。」
手を取られた。掌が有岡の唇に当たって、びくりとする。
「離してやんない。」
その顔が嬉しそうだったから、言えなかった。
離れても良いよ、なんて言えなかった。