不良の有岡について。
それに気づいたらしい怒田は少し笑うように言った。
「有岡なら、用があるって言って走って出て行ったけど。」
「走って…。」
「何があったか、聞くか?」
タオルを桶に戻す。
私は視線を上履きに落として、溜め息にも似た深呼吸をする。
聞くか、聞かぬか、聞きたいか、聞かないといけないか。
多分、有岡が向かったのは弟の所。
宿命だというのか、それとも逃げたのか。
「聞いた方がいい?」
前者だと思うけど、後者であって欲しいと思う自分もいる。