不良の有岡について。

もしかして気を遣われたのかもしれない。気づいたのは皿を洗った後。

学校の課題をテーブルに持ってきて、有岡と二人きりになってから。

有岡も同じことを思ったらしく、心なしか苦笑い気味。


「耳、大丈夫?」

「ああ、大丈夫。」


耳より顔面だけれど、それより痛そう。貼った絆創膏に血が滲んでいる。

ふわりと有岡の香りがしたと思えば、ぴたりと隣に来た。顔を見上げる。


「聞いた、怒田から。今日の喧嘩の発端みたいなの。」


少し驚いたように目を見開く。でもそれは一瞬で、すぐに目が逸らされた。


「それは計算外だ。」






キッチリ閉まった窓は隙間風すら通さず、閉塞感を与える。


「理由、聞きたい。」


そう言った私の言葉はやはり怒田にとって意外なものだったらしい。

それでも最初から話すつもりではあったらしく、口を開いた。


「哀河の、中学の時のこと聞かれたんだよ。」


それは、私にとって意外なもの。




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