不良の有岡について。
ハナイチモンメ。
「ねえ、お母さんに会いたい?」
弟の目がまん丸くなった。
眠りに落ちる前に、あの弟の顔が目の前を過ぎる。
“お母さん?”
“そう、前に一緒に住んでた、キミを産んだお母さん”
会いたくなんかない、とそう言って。自分の子供ですら放棄した人間なんかに。
これは私の我が儘なのだけど。
弟は小さく頷く。時が止まる。何?どうして、今、
“会いたい”
思えば、私が考える以上にきっと弟は我慢を繰り返してきた。