不良の有岡について。

初めて、街の中をフラフラした。洋服を見て、アクセサリーを見て、有岡に似合いそうなピアスと廿楽が好きそうなネックレスがあったから買った。

先程のメールはやはり廿楽からで、『今度パフェ食べに来てね』と脈絡のない一文と顔文字。廿楽らしい、と思いながら街をうろつく。

“ついに世界進出”と大きな画面に打ち出された文字に目を奪われて、思わず見上げる。若い四人組のバンドがあった。

すごい、こんな人達が売れてるんだ。

整った顔を見ながら、これなら有岡も入れるんじゃないだろうか、なんて悠長なことを思ってもいられない。

夕飯の買い物に行かなくちゃ、とスーパーの方へ足を進めて、はたと気づく。

そういえば、弟が家に居ないのか、と考えなおして精肉屋でコロッケを買おうかと商店街に入った。八百屋さんの前を抜けて、良い香りのするカレー屋の前も通る。

考える。
弟は、もう帰ってこないのだろうか。




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